院長の教育方針4

採用に際しての注意点

私自身の性格を分析してみますと、何事にも早めに結論を出し、また心配症の為、リスクに対しては早め早めの対策をとっています。
ですから、問題点は大変なことになる前に、小さな芽のうちに摘み取らないと気が済まないように感じます。

スタッフとのいい関係の要因を考えていく時に、これらのことがいい方向に回っているのです。
ここ何年間か、スタッフのことで大きく悩んだことがないくらいに、いいスタッフに恵まれています。
本当にありがたいことですが、その秘訣を分析してみて、いくつかの点で注意していることを挙げてみます。

1.早めに採用の準備をする

物事は、ギリギリの切羽詰まった状況で手を打ったのでは、手遅れの場合が殆どなのです。
早めに求人募集を出して、辞める時期より早く決まってしまうと、勤める人が重なって、人件費が無駄になると考えるから、どうしてもダブル時期が少ないようにギリギリでの求人募集になってしまうのです。

確かに余分な人員がいると、お金が無駄に使われるようでイライラするかもしれませんが、望まないタイプの人間に入社されて、その後何年も悩まされるよりも、希望の人材が来るまで、早めに受け入れ体制を取っていて、「この人はいい」と思える人を採用することが絶対にお得なのです。

いい人材は教育によって育てられるのではなく、採用の時点で9割方決まってしまうと考えるべきでしょう。

2.早めに結論を出す

私は試用期間中に解雇することが結構あります。
私だって解雇したくて解雇している訳ではないですが、人間性に問題があったり、能力的に極端に劣るタイプの人には、早めに辞めてもらうようにしています。

人間には向き不向きがあって、どう頑張っても無理なこともありますし、その人の性格的な問題は絶対に変えることはできないのです。
その人を全否定する訳ではないですが、私にはその人を使いこなせないと結論づけたら、早めに辞めてもらうようにしています。

この解雇のタイミングは、後になればなる程こじれてくるので、早めの結論を出しています。
こういう解雇もあり得るので、1の早めに採用の準備をすることが大切になってくるのです。

3.今いるスタッフを大切にする

今までにいいスタッフがそろっていても、悪いスタッフが入ってくれば、あっという間にスタッフの雰囲気は悪くなります。
「悪貨は良貨を駆逐する」という諺がありますが、問題のある社員を入れてしまうと、今まで作りあげてきたクリニックのいい雰囲気が一変してしまうことになるのです。

今までの社員がいたから、クリニックはやってこれたのですから、その人達に新しいスタッフを本採用するかどうかの意見を聞いて、今までのスタッフを大切にしている姿勢を見せることが、今後もそのクリニックの為にがんばろうという気持ちになってくれるのです。

4.院長の考え方、クリニックの方針を事前に知らせておく

新しく勤務する人にとって、そのクリニックがどういったクリニックなのかが分からないことは、とても不安です。

雇う方にしても、勤務した後に、簡単に辞められたりしても困りますので、院長の考え方や、クリニックの方針をホームページや口答、文書、なんでもいいので、十分に理解してもらった上で勤務したいかどうかを判断してもらった方が、後々楽なのです。

いいことばかりを言って、甘い考え方の人に勤めてもらうよりは、初めにきちんとした医院の姿勢を示しておいて、それなりの心構えで入社してもらった方がいいのです。
鉄は熱いうちに打った方がいいのです。

“正しい”かどうかにはこだわり過ぎない

生きていく上で最も厄介なことのひとつが、人間関係ではないでしょうか。
夫婦、スタッフ、お客様、友人など人と接していれば、あつれきが生じることがあります。
このあつれきの原因の最たる理由は、どちらが正しくてどちらが間違っているかということを突き止めよう、自分が正しいことを相手に分からせようとすることにあるように思います。

お互いが、自分は正しいと思っているから、平行線の話し合いになって喧嘩になるのです。
育った環境や生き方、考え方が違えば、何が正しいかということにはいろんな考え方があるのです。
ですから、正しいかどうかということを最終結論にしている限り、人間関係に衝突は避けられないのです。

長年、自分の中に培われた"正しさ"の常識の枠から外れたことを主張されると、相手の間違いを正したくなるのが本能なのかもしれません。
しかし、議論しても無駄な相手と気づいたら、一刻も早く、その議論から逃げる工夫をすべきでしょう。

どちらが正しいか追い求めることよりも、無駄な時間、嫌な思いをする時間を減らすことにエネルギーを使うほうが断然大切なことなのです。
本当に何が正しいかは神様が決めるしかないのかもしれません。

本気になれば人生が変わる

毎年恒例の「スタッフのモチベーションアップセミナー」には、当クリニックの社員を全員参加させることを、雑談の中で顧問の税理士に話したところ、「よくもまあ、スタッフの前で3時間も話すのが恥ずかしくないですね~。自分だったら、絶対にスタッフは呼びませんよ!」と言われました。

顧問税理士の言うことはごもっともです。
実際、私だって、スタッフの前で偉そうなことを言えば、スタッフが心の中で「言ってることとやってることが違うじゃない!」とか、上げ足を取られるのではないかと思えば、セミナーで話しづらくなってきます。

恥ずかしいという気持ちを優先すれば、スタッフはセミナーに呼びたくありません。
しかし、スタッフ教育を考えれば、こんな絶好の機会は2度とないので、参加を義務付けました。

どんなことにもメリットとデメリットがあります。
自分のセミナーに、スタッフを呼ぶということは恥ずかしいというデメリットはありますが、スタッフの成長という点からいえばこれほど貴重な機会はないと思っています。

スタッフも18人になり本気で人材育成を考える今の段階では、スタッフが成長するためにはたいていのことは何でもする気持ちでいます。
恥ずかしい気持ちが先立つのは、自分の中の本気度がまだまだだということだと思っています。

私の好きな言葉に「本気になれば人生が変わる、人生が変わっていないのは本気になっていないからだ」というのがあります。
私自身、社員教育には全身全霊を傾けています。
社員教育に本気になってから、見えている世界が変わってきました。

「本気になれば人生が変わる」ということを、仕事を通じて、社員教育を通じて実感しています。
今の私にとって、一番のやりがいと幸せが社員教育なのです。
前世というものがあるとすれば、「私の前世の仕事は学校の先生かな?」と思うぐらいに社員の成長が楽しみになってきました。

開業して5年近く、半年以上勤めるスタッフが1人もいなかった自分を思い出すと、この気持ちの変わりようが不思議な気持ちがしますが、その分、今の自分の成長を嬉しくも思います。
世の中が「会社は人材次第」と言われればいわれるほど、私のクリニックは安泰だなと自信を持って思えます。

泣いて馬謖を斬る

中国に「泣いて馬謖を斬る」ということわざがありますが、クリニックを経営していて、優しさと厳しさのバランスに悩むことがよくあります。
自主性と強制的ともいえるかもしれません。

できることならどの経営者も、社員の自主性に任せ優しく接したいものです。
しかし、仕事というものはあるレベルに達しなければ仕事をしたことにはなりません。

趣味は自己満足でいいですが、仕事は他者満足を得て始めて完結します。
プライベートな友人関係ならミスをしても「ドンマイ、ドンマイ」ですみます。
しかし仕事においては、自分がミスをするということはお客さんなり、同僚に迷惑をかけることになります。

職場は仲良しクラブではありません。
お互いのミスを許しあうという風潮の裏には、「自分がミスをした時も許してね」という暗黙の甘さが隠れています。

お客さんに迷惑をかけておいて、「ドンマイ、ドンマイ」ですます風潮の会社は、遅かれ早かれつぶれていくでしょう。
その時点で、「ドンマイ、ドンマイ」でなかったことにやっと気がつきます。
しかし、「時すでに遅し」なのです。

経営者は社員に比べ、常にお客様を意識していますので、小さなミスにも敏感ですが、社員によっては、ミスに対する温度差があります。

小さなミスに対しても許されないこと、という緊張感がある職場と、小さなミスなので「ドンマイ、ドンマイ」で人間なんだから仕方がないではないかという雰囲気の会社では、ミスの頻度も違えばお客様の満足度も違ってきます。
その差をコントロールできるのはトップの経営者しかいないと思っています。

「和」を強調しすぎるあまり、「厳」がおろそかになりがちですが、「厳」があってこそ「和」に意味が出てくるのだと思います。

トップは、どうしても目の前の社員の顔色を見がちですが、社員に迎合して「ドンマイ、ドンマイ」ですましているのか、見えないお客様のほうを見て適度な緊張感を維持していくために「厳」を取り入れるのかでその会社の将来性が決まってくるように感じます。

「和」で妥協するのか、「厳」を取りいれられるかは、最終的にはトップがその会社をどういう方向に進めていきたいかの「思い」の違いで決まってくるように思います。

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